サブドミナント・マイナー応用編:ダイヤトニックによるコード進行その⑨:知識ゼロからのギターコード攻略(35)

前回(34)「サブドミナント・マイナーとは?」では、ダイヤトニック上のサブドミナント・コード(Ⅳ)を基本であるメジャーからマイナーに変える、正確には「マイナー・ダイヤトニックからお借りしてくる」という内容を中心にコード進行に変化を付けるアイデアをご紹介しました。今回はその続き、応用編です。マイナー・ダイヤトニックからお借りできるもの全てを使ったら?という発想です。では行ってみましょう。

マイナー・ダイヤトニック・コードを機能別に分類

マイナー・ダイヤトニック・コードにはどのようなコードがあったでしょうか?ここではコードの機能という観点で分けて考えてみます。ダイヤトニック・コードは3つに分けられる、という話は(27)「3つしかないコードの機能」のところで説明済みですが、マイナー・ダイヤトニック・コードにおける3つの機能、すなわちトニック(T)、ドミナント(D)、サブドミナント(SD)は以下のようになります。3種類ある各マイナースケールごとに異なる部分がありますので注意深く見てください。Tsubなどと略字の意味は以下の通りです。

 

 T・・・このキーにおける標準のトニックコード

  Tsub・・・トニックの代理コード

 

 D・・・このキーにおける標準のドミナントコード

  Dsub・・・ドミナントの代理コード

 

 SD・・・このキーにおける標準のサブドミナントコード

  Dsub・・・サブドミナントの代理コード

ナチュラルマイナー・ダイヤトニック・コードの機能分類:Cm
ナチュラルマイナー・ダイヤトニック・コードの機能分類:Cm例
ハーモニックマイナー・ダイヤトニック・コードの機能分類:Cm
ハーモニックマイナー・ダイヤトニック・コードの機能分類:Cm
メロディックマイナー・ダイヤトニック・コードの機能分類:Cm
メロディックマイナー・ダイヤトニック・コードの機能分類:Cm

いかがでしょうか?こうやって並べてみると何が何だか分かりにくいですよね^_^;

 

下に、機能ごとに全てのコードをまとめてみます。

 


TおよびTsub・・・Ⅰm7(Cm7)、ⅠmMaj7(CmMaj7)、

         bⅢMaj7(EbMaj7)、bⅢaugMaj7(EbaugMaj7)、

         bⅥMaj7(AbMaj7)、Ⅵm7b5(Am7b5)

 

 

DおよびDsub・・・Ⅴm7(Gm7)、Ⅴ7(G7)、

         Ⅶdim7(Bdim7)、Ⅶm7b5(Bm7b5)

 

 

SDおよびSDsub・・・Ⅳm7(Fm7)、Ⅳ7(F7)、

           Ⅱm7b5(Dm7b5)、Ⅱm7(Dm7)、

           bⅥMaj7(Ab7)、bⅦ7(Bb7)

 

 

ザックリと3つにグループ分けできました。これをもとに代理コード進行を作ってみるというわけですね。

マイナー・ダイヤトニックから借用してきたコードをはめてみる

サブドミナント・マイナー代理和音bⅥ6(Ab6)を使用した「ふるさと」コード進行例
サブドミナント・マイナー代理和音bⅥ6(Ab6)を使用した「ふるさと」コード進行例
サブドミナント・マイナー代理和音bⅦ7(Bb7)を使用した「ふるさと」コード進行例
サブドミナント・マイナー代理和音bⅦ7(Bb7)を使用した「ふるさと」コード進行例

上記2つはどちらも、サブドミナントの代理コードです。SDコードつまりFMaj7が来るはずのところに代わりのコードが出てきています。「SDおよびSDsub」グループの「bⅥMaj7(Ab7)」と、「bⅦ7(Bb7)」を使用しています。

次の例は、TコードとDコードも代理コードになっています。このコード進行例ではコードが半音階的に上昇して結末に向っていきます。IMaj7の代わりにbⅥMaj7を、Ⅴ7の代わりにⅦdim7を使用しています。

マイナー・ダイヤトニックからの代理和音を用いて半音階的進行(上昇)「ふるさと」コード進行例
マイナー・ダイヤトニックからの代理和音を用いて半音階的進行(上昇)にした「ふるさと」コード進行例

最後に、半音階的下降進行の例を作ってみます。ここでは3小節目に「裏コード」を持ってきてなめらかな半音進行を可能にしています。メロディがコードに即してbしている部分に注意して下さい。

マイナー・ダイヤトニックからの代理和音と裏コードを用いて半音階的進行(下降)にした「ふるさと」コード進行例
マイナー・ダイヤトニックからの代理和音と裏コードを用いて半音階的進行(下降)にした「ふるさと」コード進行例

以上、マイナー・ダイヤトニック中のダイヤトニック・コードを知ることでそれをいかに応用するかを紹介してきました。同じひとつのメロディ・ラインに対して、標準のメジャー・キーのダイヤトニック・コードから始まって、どのようにして次第に複雑かつ魅力的なコード付けが出来るのか、コード進行を生み出せるのか、大なり小なり参考になれば嬉しく思います。ここまでが、広い意味でのダイヤトニック・コードの守備範囲だと言えるでしょう。これら以外になると、ダイヤトニック・コードから外れた特殊なコード(進行)の領域になりますが、それを見分けるためにも、このダイヤトニック・コードの可能性を理解しておくことが重要となります。

 

 

※参考記事:ダイヤトニック・コードによるコード進行の記事一覧

 (27)3つしかないコードの機能:ダイヤトニックによるコード進行その①

 (28)標準の代理コード:ダイヤトニックによるコード進行その②

 (29)セカンダリー・ドミナント:ダイヤトニックによるコード進行その③

 (30)裏コード:ダイヤトニックによるコード進行その④

 (31)マイナー・ダイヤトニック:ダイヤトニックによるコード進行その⑤

 (32)マイナー・ダイヤトニックのコードフォーム:ダイヤトニックによるコード進行その⑥

 (33)マイナー・ダイヤトニック・コードの使用例:ダイヤトニックによるコード進行その⑦

 (34)サブドミナント・マイナーとは?:ダイヤトニックによるコード進行その⑧

 (35)サブドミナント・マイナー応用編:ダイヤトニックによるコード進行その⑨



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