ディミニッシュ・コードをしっかり理解して使おう:知識ゼロからのギターコード攻略(38)

ディミニッシュ・コードを入れた「ふるさと」って?

ディミニッシュ・コード(dim7)使用例の「ふるさと」末尾4小節
ディミニッシュ・コード(dim7)を使用した「ふるさと」コード進行例

前回までにセカンダリー・ドミナントサブドミナント・マイナー、そしてドミナント・セブンスの特殊な用法と、標準のダイヤトニック・コード以外の様々なコードについて可能性を見てきましたが、未だ扱っていなかったコードがあります。ディミニッシュとオーギュメントですね。

 

遠い昔、「悪魔の音程」と呼ばれたトライトーン(三全音音程)を2つも含むまさにデーモ二ッシュなコードがご存じdim7です。正式にはディミニッシュ・セブンですが、一般的にディミニッシュ・コードという場合が多いです。ダイヤトニック・コードの中では、メジャーと3種のマイナー・ダイヤトニックのうち、唯一ハーモニック・マイナーで姿を表すコードです。このdim7は使えるか?だとすればどのように?というのが今回のテーマです。まずはコードの特徴を見てみましょう。

不気味なサウンドのdim7、実は非常にバランスのとれたコード?

Bdim7構成音
Bdim7構成音:12半音階を4等分している

ハーモニック・マイナー(和声的短音階)のダイヤトニック・コードのⅦのコードが、この「dim7」のタイプになっていますCmのキーでいうとBdim7ですが、ギターで実際に弾く場合、おおよそ次のようなコードフォームが出てくるでしょう。


このコードの音程的特徴は「R-m3-b5-bb7(M6)」であり、Rから短三度の音程を順次重ねたものとなっています。コード構成音おのおのの音程間隔が均等だということですね。

Bdim7②~⑤弦フォーム
Bdim7:②~⑤弦フォーム
Bdim7:①~③+⑤弦フォーム
Bdim7:①~③+⑤弦フォーム

Bdim7:①~④弦フォーム
Bdim7:①~④弦フォーム
Bdim7:②~④+⑥弦フォーム
Bdim7:②~④+⑥弦フォーム
Bdim7:③~⑥弦フォーム
Bdim7:③~⑥弦フォーム

4つの構成音の音程間隔が同じ短三度であるコードとはどういうことでしょうか。つまり「Cdim7」であれば構成音は「C・Eb・Gb・A」ですが、これはCdim7とも、Ebdim7、Gbdim7、Adim7にもなります。サウンドの上では同じでり、当然異名同音であるD#dim7、F#dim7も、これらは全て同じ構成音です。楽譜上ではルート音(低音)の位置に即して名前を使い分けることがあるにせよ、実際に聞こえる音は全く同じコードだと言うことです。このように実際にはこのdim7というコードは、Bdim7、Cdim7、C#dim7の3つしか存在しないということです。各構成音をまとめると以下のようになります。

 

 

 Bdim7・・・B・D・F・Ab

 

 

 Cdim7・・・C・Eb・Gb・A

 

 

 C#dim7・・C#・E・G・A#

 

 

うなわち、こうなります。

    Bdim7=Ddim7=Fdim7=Ab(G#)dim7



    Cdim7=Eb(D#)dim7=Gb(F#)dim7=Adim7



    C#(Db)dim7=Edim7=Gdim7=A#(Bb)dim7

Bdim7
Bdim7
Cdim7
Cdim7
C#およびDbdim7
C#(およびDb)dim7

dim7、このコードの機能は2つある?

このdim7がマイナー・ダイヤトニックの中で出てくるとき(Ⅶdim7)、機能としてはドミナントです。図のように、「シ⇒ド」「ラb⇒ソ」とそれぞれ半音進行してトニックへ解決する、マイナー・キーにおけるドミナント・モーションを形成します。

 

「シ⇒ド」という「導音から主音」への動きを、コード化したものが「Ⅶdim7⇒Ⅰ(Ⅰm)」という半音上昇進行であり、この働きを応用すると、目的とするコード(具体的にはルートもしくは完全5度)に向かう半音下の位置に挿入可能です。ダイヤトニック・コードのm7b5コードを除く残り6つのメジャーとマイナーのコードそれぞれに対して導音としてdim7を使うことが可能。Cメジャーのダイヤトニック・コードで説明すると以下のようにdim7をかますことができるというわけです。

Cダイヤトニック・コードの各コード(Bm7(b5)は除く)に対して半音下からアプローチできるディミニッシュ・コード一覧
Cダイヤトニック・コードの各コード(Bm7(b5)は除く)に対して半音下からアプローチできるディミニッシュ・コード一覧

上記内容は、ディミニッシュ・コードをドミナントの機能として用いる例でしたが、次にもう一つ別の使い方を紹介いたします。もうひとつの使い方は、トニック・コード(通常ⅠまたはⅠm)をdim7にするという方法で、これは例えばコード進行がⅠMaj7で終わる曲のその部分にⅠMaj7ではなくⅠdim7を弾く、そうするとハーモニーとしては違和感は無いのですが曲が終わった感じがせずフェイントをかけられたような印象を与えます。「Dm7-G7-C」と「Dm7-G7-Cdim7-C」とを比較してみてください。これはFやFmあるいはCsus4を使う場合に似ていますね。「偽終止」と呼びますが、このような使い方つまりサブ・ドミナント的機能として使うことも出来るわけです。

「ふるさと」末尾2小節:標準型
「ふるさと」末尾2小節:標準型例
「ふるさと」末尾2小節:dim7で偽終止
「ふるさと」末尾2小節:dim7で偽終止の例

「ふるさと」末尾2小節:sus4例
参考① 「ふるさと」末尾2小節:sus4例
「ふるさと」末尾2小節:F例
参考② 「ふるさと」末尾2小節:F例
「ふるさと」末尾2小節:Fm例
参考③ 「ふるさと」末尾2小節:Fm例

このようにディミニッシュ・コードは、ドミナントの機能として、あるいはサブ・ドミナントの機能としても使用することが出来るのです。これを踏まえて、本記事冒頭の「ふるさと」コード進行例をもう一度味わって頂けたらと思います。その意味が理解でき、耳で実感できるのではないでしょうか?理解は実用化への確かな一歩となるはずです。



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