ドミナント・セブンス・コードの特殊なケースその②「スパニッシュ(フラメンコ)由来」:知識ゼロからのギターコード攻略(37)

前回はブルースを扱いましたが今回はまたしても調性音楽の中でも独自の存在感でひとつのジャンルを形成している音楽、「スパニッシュ(フラメンコ)音楽に由来するドミナント・セブンス」を見てゆきます。

 

まずは譜例をご覧ください。Ⅳのコードにドミナント・セブンス(=F7)が使われている箇所があります。なお、スパニッシュな曲調を意図しているためコードに応じてメロディの最後が半音付加の字余りになっていますのでご注意ください。

特殊なドミナント・セブンス・コード例②:フラメンコな「ふるさと」末尾4小節
特殊なドミナント・セブンス・コード例②:フラメンコな「ふるさと」末尾4小節

典型的なフラメンコ進行とは?

フラメンコをフラメンコたらしめる要素に、そのメジャーともマイナーとも言えない曲調が挙げられますが、その秘密は「フリジア旋法」にあります。CメジャーのダイヤトニックにおけるⅢ=「ミ」の音楽のことであり、曲がミすなわち短調の属音で終止する音楽です。音階上は短三度でありながらコードの終止形は長三度という、ブルースにもあったようなメジャーとマイナーの共存現象がここでも起こっています。じつに独特な世界観ですよね。

 

まずは最もシンプルな単純下降のコード進行から。

フラメンコのコード進行例① ※キーはEのフリジアン=C/Am。下段はC=Ⅰと見立てた場合の機能コード数字表記。
フラメンコのコード進行例①:キーはEのフリジアン=C/Am ※下段はC=Ⅰと見立てた場合の機能コード数字表記。

通常、ダイヤトニック・コードのパターンとしてはⅢはm7コードであるわけですが、フラメンコの場合、メジャーコードです。


次の二つは、フラメンコ音楽によくある典型的な応用型コード進行例です。興味のある方なら、いくつかのフラメンコ・ギターやうたのCD等を注意深く聴いてみていただければすぐに発見できることでしょう。そしてこの2つの例の中に、Ⅳコードのドミナント・セブンス化が出てきます。ぜひ実際にコードを鳴らしてその味わいを確認してみて下さい。

フラメンコのコード進行例② ※キーはEのフリジアン=C/Am。下段はC=Ⅰと見立てた場合の機能コード数字表記。
フラメンコのコード進行例②:キーはEのフリジアン=C/Am ※下段はC=Ⅰと見立てた場合の機能コード数字表記。
フラメンコのコード進行例③ ※キーはEのフリジアン=C/Am。下段はC=Ⅰと見立てた場合の機能コード数字表記。
フラメンコのコード進行例③:キーはEのフリジアン=C/Am ※下段はC=Ⅰと見立てた場合の機能コード数字表記。

例③は一見ややこしいですが、Eのコードに向って「D⇒Eb⇒E」と低音が半音進行するメロディアスな進行例です。

 

「スパニッシュ由来のドミナント・セブンス」と強調しました理由はF⇒Eというコード進行の終止感を強める働きをするのがこのF7だったのです。単なるFもしくはF6などのコードからEに進行するより、F7からEに進んだほうが、発生したEb(Eの半音下)の音によって「シ⇒ド」のような導音の働きによる強い解決感が生まれます。これがもう一つのドミナント・セブンス・コードの特殊なケースの例です。

 

このF7の使用例は、ほんとのところはEのコードへ向うセカンダリー・ドミナントB7の裏コードとしてのF7であると言ったほうが理論にかなっているのかもしれません。つまり「フリギア旋法のフラメンコ音楽では、本来のドミナント・モーションというものが存在しないため、セカンダリー・ドミナントでBm7b5をB7に変えてB7⇒Eというドミナント・モーションを作りだし、それをさらに裏コードとして発展させたときにようやくたどり着くコードがF7、このF7がフラメンコのⅣ7だ」という理屈です^^;ややこしいですよね・・・


理論はあくまで理論、実際に聞こえる音楽がやはり重要なのは言うまでもありません。あえて裏コードという表現を使わなくとも、実際にフラメンコ音楽で特徴的にみられるコード進行には「Ⅳ7⇒Ⅲ」があるんだということを知って頂けたら幸いです。

フラメンコのコードならではのテンションとは?

ここでフラメンコのコードについて少し補足しておきます。例中でいう終止音のEのコードは、単純なメジャー・トライアドである場合も多いのですが、一層フラメンコさに輪をかけるテンションを付加したコードで終わることも多々あります。しばしば耳にする例を列挙してみます。


 E・・・・・・(構成音) E・G#・B


 E(add b9)・・・・・・・E・G#・B・F


 E7・・・・・・・・・・・ E・G#・B・D


 E7(b9)・・・・・・・・・E・G#・B・D・F


 Esus4(add b9)・・・・・E・B・F・A


 E11(b9)・・・・・・・・ E・G#・B・D・F・A


なかなか押さえ方が見つけにくいコードもありますが、他のキーで弾けば開放弦を上手く使うことが出来る場合も多々あります。

サブドミナント・マイナーのアプローチでさらに応用

最後に、これまでの応用としてサブドミナント・マイナーの手法をここで取り入れてみようと思います。サブドミナント・マイナーとは同主調のマイナー・キーにあるダイヤトニック・コードをお借りしてくるというものでした。キーCにおけるフラメンコ進行とは「AmーGーFーE」になるわけですが、Cの同主調マイナーであるCmの場合のフラメンコ進行は「Cm-Bb-AbーG」です。これを借用して、Cのキーの曲中に取り入れるということを行ってみます。

 

その前に「Ⅵm-ⅤーⅣーⅢ」進行のⅥmをⅠmと見立てた場合の数字コードを表しておきます(下段)。

フラメンコのコード進行例①のトニック・マイナーで表記変更:Am=Ⅰmで表示
フラメンコのコード進行例①のトニック・マイナーで表記変更:Am=Ⅰmで表示
フラメンコのコード進行例②のトニック・マイナーで表記変更:Am=Ⅰmで表示
フラメンコのコード進行例②のトニック・マイナーで表記変更:Am=Ⅰmで表示
フラメンコのコード進行例③のトニック・マイナーで表記変更:Am=Ⅰmで表示
フラメンコのコード進行例③のトニック・マイナーで表記変更:Am=Ⅰmで表示

というわけで、サブドミナント・マイナー(同主調マイナーからの借用和音)と、フラメンコらしいテンション・コードをもって、メロディに変更を一切加えずにアレンジした「ふるさと」はこうなりました。ここでは、スパニッシュ(フラメンコ)由来のセブンス・コードとして「Ab7」が使用されています。

特殊なドミナント・セブンス・コード例③:ムイ・フラメンコな「ふるさと」末尾4小節
特殊なドミナント・セブンス・コード例③:ムイ・フラメンコな「ふるさと」末尾4小節

最後はちょっと複雑すぎたかもしれませんが、いかがだったでしょうか?上記のコード進行に関しましては、ギターで実際に音が確認できるようにコード・ダイヤグラムも載せましたので、難解に感じた方は、せめてフラメンコな雰囲気だけでもぜひご賞味ください^_^;



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