ギターのソロ演奏ってほんとに・・・

フラメンコギター独奏の第一人者サビーカス
フラメンコギター独奏の第一人者サビカス

発表会を間近に控え、自分の演奏する曲と向き合いながら「あれ!?家では弾けてるんだけどな(苦)」という生徒さん・・・。こういう展開はよくあることです。ギターを一人で演奏するというのは、ほんとに簡単なことではありませんよね。

 

「石の上にも3年」ということわざがあるように、音楽の世界にもそれに似た名言・ストーリーがあります。私の好きなフラメンコギターの世界でも、パコ・デ・ルシア以前の巨匠サビーカスはこんな言葉を残しています。

 

 

「歌伴奏に10年、踊り伴奏に10年、そしてそのうえでソロに10年」

 

 

これは本物のフラメンコギター・ソリストになるにはこのような経験値が必要だという意味で語られた内容です。

一つの曲に年月を費やすこと、これはとても大切なことでありまた尊いことだと思います。音楽や楽器の素晴らしさに目覚めた度合いに従って、より強く感じることなのかもしれません。

 

「今年の初めからずっと練習してきたのに、あれはいったい何だったのだろう?」こんなに練習したのに満足に弾けないなんて、と思われたのでしょうか、お気持ちはよく分かりますが、半年・1年という時間は果たして音楽にとってどういう基準なのか、ここで少し考えてみたいと思います。

バッハの無伴奏チェロ組曲を世に知らしめたカザルス
バッハの無伴奏チェロ組曲を世に知らしめたカザルス

伝説のチェリスト、パブロ・カザルスの物語を紹介します。

 

 

「楽譜屋の片隅に見つけたバッハの無伴奏チェロ組曲は当時誰も演奏していなかった。

「演奏してみようと練習を始めると、チェロ1台だけで奏でるその音楽の緻密さと難しさに驚愕した。

「またその素晴らしさを芸術家として自負心を持って発表するまでに、年月を費やした。

「そして演奏会で初めて発表するまでに実に、12年かかった。」

 

 

ということです。

 

3年同じ石の上に座っていれば、冷たかったその石も暖かくなる、2年ぐらいではまだ冷たいかもしれない、3年以上かかるかもしれない、でもいつの日か暖かくなることを信じて、曲を愛し、練習しまた練習し、忘れた頃にまた採り上げて練習し、自ら曲を楽しむうちに、心のこもった音楽に変わっていることでしょう。