1.ギター・スタイルの全貌をみつめる

日々ギター上達を目指すあなたは「ギター・スタイルの全体像」というものを考えたことはあるだろうか?
ギターで何がしたいのか?という問いに対して、例えば「自分の曲で人々をハッピーにしたい」などの抽象的な答えも重要なのだが、具体的な手段が何なのかを答えられなければ次には進めない。つまりどんなジャンルやタイプの音楽、どういうスタイルのギターでやってゆきたいのか?ということだ。この選択に迫られる方も多いはずだ。
300年ほど前のヨーロッパならば、ギターといえば現在のクラシックギター以外を指すことは無かったかもしれない。しかし今日、ギターといっても、楽器の種類から、ジャンル、奏法、またバンドの中の一パートとしてのギターから弾き語りの伴奏ギター、フィンガースタイルの独奏など様々ある。
個々の目的に合わせたスタイルの「選択」が、必要不可欠であるのは言うまでもない。
前述のような抽象的な目的をより明確にしてゆくことと同時に、自分がどのようなギターのスタイルを用いてそれを実現してゆくのかについてもはっきりさせてゆくことが重要だ。
おおまかでも構わない、ギターのスタイル全体像を知っておくことで、何をすべきかが見やすくなり、練習にも大きく役立つ。魚の居場所を知ろうともせずに、大海に向かってただやみくもに細い糸をたらし続けても釣れる漁師にはなれない。
2.楽器の種類を選ぶ

まず使用する楽器という選択がある。たとえば、楽器の種類の違いを見ると、アコースティックギター、エレクトリックギター、そしてアンプにつなげるアコギいわゆるエレアコがある。
そもそも「アコースティック」というのはエレキではない生楽器という意味で、ナイロン弦を張ったクラシックギター、スチール弦を張ったフォークギターの系統に分かれる。ただ一般的には、アコギというと狭い意味でのアコースティックギターすなわちフォークギターのこと言う。ジャンルや形態、用途に応じて使い分けられてきたというわけだ。調弦などの基本的構造は同じでも、音色や使い勝手、奏法上の得手不得手など細かな差異は多い。
3.ギターのジャンルを選ぶ
次に、ジャンルの違いを、こちらもザックリと見てみよう。
クラシックギターの世界では、クラシック音楽およびクラシックギターの音楽を、主に独奏スタイルで演奏される。ルネサンス時代から現代に至る歴史的作曲家たちの残した楽曲、楽譜になっている音楽を、いかに解釈し表現するかというところが重要である。その名の通り、ナイロン弦を張ったクラシックギターを用いる。ちなみに、クラシックギターが好んで用いられるジャンルには他にボサノバ、演歌などもあるがその特徴については割愛させていただく。
これに対し、ジャズ系の音楽は、作曲家的視点で自らメロディやハーモニーを即興的に変化させ生み出してゆく創造的演奏が重要な中身となっている。楽曲はクラシックに比べシンプルな構成のものがほとんどで、いわゆるスタンダードソングから演奏者のオリジナルまで、それらを1度限りの即興演奏で表現する。楽器はアコースティックからエレクトリックまで奏者によって様々に使い分けられるが、どちらかというとバンド形式での演奏を基軸としたエレキが主流。
フラメンコギターは、フラメンコがカンテ(うた)・バイレ(おどり)・トーケ(ギター)の三位一体で総合芸術として発展するなかで、クラシックやジャズなどの様々な要素を吸収しながら成長した。ラスゲアード奏法など高度な右手の指弾きが特長で、また音楽としては独特のフリギア旋法が多用される。そして特徴あるリズムだ。一人前のギタリストになるには「歌伴奏に10年、踊り伴奏に10年、そしてギター独奏10年」と言われてきた。なお、楽器としてのフラメンコギターは音質音色が少し異なるが基本的にはナイロン弦が張られたクラシックギターと同じである。
最後に、スチール弦の張られたフォークギター。これを用いるジャンルは様々あるが、ここではアコギ系と称してザックリとひとくくりにしておく。これらはすべて広義のポピュラーミュージックの範疇に収まるといえる。コードストロークやアルペジオによる弾き語り。ロックなどバンド音楽におけるエレキギターにも通ずるピックを使ってのカッティングやリードプレイ。そして、カントリー系のフィンガースタイルから出発しながら派手なタッピングハーモニクス奏法をも含む高度なソロギターのスタイル。この分野では既存の歌謡曲をギターインスト曲に編曲してソロで演奏することが多く、そのアレンジの面白さやパフォーマンス性も重要な要素となっている。
4.時間をかけて真に自分がやりたいことを選びぬいてゆく
ギター・スタイルの全体像が見えていれば、自分がやりたいことを行う上でどのような技術を身につけるべきかが、一層明確になる。もちろん、自分がやりたいことというのが明確になっていなければならないのだが。
ソロギターの表現でいきたいのに、ロックのアドリブフレーズばかり練習する人はいないはずだ。オーケストラのように荘厳に和音を響かせたいのなら、ジャズのコンピングのようにではなくフラメンコのラスゲアードでコードを弾くことを考えるのも自然なことだろう。
このように、自分がやりたいこと、主な軸となるスタイル、そして必要な技術を理解してゆくことがスキルアップにつながる。当然、これは練習を明確化させ、継続させ、活性化させ、洗練させ、面白くさせる。いかに「自分が何をしたいのか」と向き合いつつ、選んでゆくことが大切だ。
ギターという楽器を扱う代表的なジャンルを、おおまかに見るだけでもこれだけのボリュームがある。やっと思いついた感動的なアイデアであっても、普段聞かない音楽ジャンルでごく普通に演奏されていることだってあるのだ。あるいは、あなたが本当に表現したかったものは今手に持っているピックでは弾けない類いの音楽かもしれない。細かく全てとは言わない。ぜひ一度、主なギターのスタイルを目や耳でそして自分のギターで確認しながら、あなた自身の目的にふさわしいギターのスタイルを探してみてはいかがだろうか。そして、自分にどんな技術が必要なのか整理してみることをお勧めする。
5.練習の計画をたてる5W2H

自分に必要な技術が多少なりとも見えてきたら、今度は練習計画を立ててみることだ。この計画により、日々の練習に方向性が与えられ、一定の成果が期待できるはずだ。
右手の能力アップ、左手、リズム感、音感、体力、レパートリー、耳トレなど・・・
あなたはやりたいことが色々あるのではないだろうか?そうは思いながら結局どれもやりこめていないな・・・そうお感じなら、練習もしくはトレーニングの計画を立ててみてはいかがだろうか。もしくは立て方を見直してみてはいかがだろうか。

WHO=もちろんあなた自身だ
WHAT=「内容の明確化(何をマスターあるいは向上させるのか)」:
・基礎力の強化(音量・音質・スピード・スタミナ・正確さetc.)
・新しい技術の習得(各種テクニック・リズムのバリエーション
・様々なコードとその転回
・様々なスケールのポジションetc.)
・楽曲(コード進行のリズム弾き・メロディやそのバリエーション・ソロピースetc.)
・感性を磨く(音感および音程感・コードのサウンド感・リズム感・グルーブ感・スケールおよびモードを覚える・色んなキーで同じことをしてみるetc.)
WHEN=「(一日の内で)いつやるか」:
・朝
・日中(午前/午後)
・夕方
・夜
・夜中
WHERE=「どこで練習するか」:
・スタジオを借りる
・隠れ家にて
・車の中で
・自宅で
・その他(屋根裏部屋?車庫?) など
WHY=これについては上記の「スタイルの選択」
および「ギター上達のためのマインドセット」で確認済
HOW=「どのようにそれをやるか」:
・右手のみで/左手のみで
・速度を落として
・反復練習で
・楽器を使わずイメージトレーニングとして
・楽器を使わず聴くことに集中して
・譜面に書いて・譜面を利用して/譜面を使わずに・譜面を見ずに
・メトロノームや音源を相手にして
・目を閉じて(いろんな意味で・・・) など
HOW MUCH=「どのくらい、いつからいつまでやるか」:
・ライブなどに向けた短期(期間限定)
・1か月などの中長期的反復練習
・毎日やる練習
・定期的なチェック:週ごと・月ごと・数日ごと・毎日 など
6.自分にあったモチベーションアップ法を持つ
せっかく素晴らしい計画が出来たとしても、その通りには進まないという話はつきものだ。
ここでは自らモチベーションを高めるためのアイデアについて触れる。やはり「刺激」というものは大事だ。例えば、ご参考までにわたくしなりのモチベイターをご紹介しよう。
◎練習シートを作成し✓を付けてゆく
◎自分の頑張りに対し褒美を与える
◎ライブ(観たり、やったり)
◎動画ライブラリ(観る、作る)⇒たとえばYouTubeのお気に入りリスト
◎「何のためのギター・ギター人生か」「ギター上手くなって何がしたいか」など見つめ直す(書く、考える時間を持つ)
◎目標に対する取り組みを自己評価する
◎偉人たちの練習法や偉人達の逸話(調べる、読む)
◎読書や仕事が刺激になることも
◎どんな練習をしたか、どんな練習が必要か、気付いたことなどをノートに書き留める
◎練習や演奏の録音・録画とそのチェック
苦手な課題が明確化し、新たな練習内容や方法のアイデア、手つかずになっていた項目などを発見することもやる気を上げる。また、自分の音を聞くことは、現実を直視してそれに向き合い真に上達してゆく大きな刺激剤である。
7.上達のためにギター練習以外にできること

人生、いつもギターを手にして、やりたい練習ができるという方は極めてまれである。最後に、たとえ楽器が無くても、できることについて思いつくことを挙げておく。とはいえ、楽器を手にとって練習できる環境にありながら、別のところで指の筋トレばかりやる・・・というのはNGだ。ロマン派の歴史的作曲家の一人、ロベルト・シューマンという名前はご存知のことだろう。この方はもともとピアニストで、上手くなるために執拗な筋トレをしたようだ。そして実際に音楽を弾くのとは別に、指に筋肉増強のための道具をくっつけて(「星ヒュウマ」のギブスみたいなものといえる・・・)トレーニングを試みた。それで、指をダメにして、ピアニストをあきらめたという(結果的に作曲家として大成したわけだから、これまた天命だったのかもしれないのだが)。
ギターを実際に弾かずにできる練習となると主に、リズム感と音感を鍛えるということになるが、私がよくやってきたものだけでもこれだけある。あなたならもっと良い別のことを思いつくかもしれない。
・水筒や空き缶でラスゲアードやストロークの練習
・耳にしたメロディを、ドレミ(移動ド)におきかえてみる
・音楽を聴くときにギターストローク、または一定の足リズムを刻みながら聴く
・あるいはベースライン(コード進行)を当てながら聴く
・演奏する予定の曲全体をイメージ演奏、または歌ってみる
・指版を視覚的にイメージして心(頭)の中で音をならす(コードやスケール、モードなど)
どんなことを練習すべきか、どんな能力を訓練させるかが明確であればあるほど、実際のギターの練習から、楽器を持っていない時間まで、効果的な時間の使い方が可能なはずだ。ぜひ上記の手順7つを参考にしてみてほしい。
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